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きよしこの夜

世界で最もよく知られているクリスマスの歌は「きよしこの夜」だろう。クリスマスシーズンの昨今、日本中どこでも聞くことができる。この歌は、一八一八年のクリスマスに出来上がった。

その当時ザルツブルグで牧師をしていたヨーゼフ・モールが詩を書き、小学校の教師であり、教会のオルガニストでもあった友人のフランツ・グルーバーが曲を付けたといわれる。

それはクリスマスの前日のことであった。オーベルンドルフ村の、聖ニコラウス教会のオルガンが急に故障してしまった。予定していたクリスマスの音楽礼拝ができなくなったモール牧師は困り果て、考えあぐねた末に、意を決して慣れない詩を書いた。それを友人のもとへと持ち込み、声楽とギターの合奏に適するようにと、大急ぎの作曲を依頼したのである。

こうして曲は完成、辛うじてイブの真夜中の礼拝に間に合わせたのであった。モール牧師のテノール、グルーバー先生のバスとギター演奏による美しい調べが会堂に流れたという。事前の練習といっても、礼拝の始まる三十分前に一度声を合わせるのがやっとのこと、誰一人としてこの即興の歌が世界中に広まるとは思わなかった。 

ところがその翌年、オルガンの修理に来た職人が、それらのエピソードの一部始終と、何よりも曲を聴いて感動し、国道沿いの町チロルに伝えた。

それが十三年後にはライプツィヒで、その八年後にはニューヨークでというように、またたく間に世界に広まったのであった。 

歌は広まったものの、作詞と作曲をした人のことは忘れ去られた。実に三十六年間も作者不明のままだった。グルーバー先生の息子が、父の作曲であることを証言して、改めて真相が知られたのであった。

日本中でこの曲が歌われることを感謝しよう。やがてリバイバルが起こり、心から主のご降誕を賛美する日が来ることを祈り、お待ちしたい。

一九九三年十二月十二日

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