石の枕
トンボの目 十二月に入り解決されない問題が山積みされるとますますあせってしまう。そんなときは自分をしばっている固定観念を捨て去る必要がある。
常識という「単眼思考」ではなく、トンボのような「複眼思考」を持つことが大切とされる。
中国では、良いアイデアを得るためには、「三上」の思考という。三上とは「鞍上(あんじょう)・馬上のこと」「枕上(ちんじょう)・ベッドの上のこと」「廁上(しじょう)・トイレの中のこと」である。
馬に揺られているとき、床に就いたとき、そしてトイレに入っているときが、アイデアを生み出すための環境として、ベストスリーの場所として挙げられているわけだ。もっとも、現代では馬に乗って移動する人はあまりいない。鞍上を現代的に言い直せば、クルマや電車に乗って移動している時間ということになるだろう。
ジョン・ウェスレーは馬上で説教の準備をしたといわれる。ウマい説教ができたわけだ。
今週三十七人の方々が、牧師と一緒にカナダとアメリカの伝道旅行に出る。(飛行機に乗るなら窓側がよい。日付変更線が見えやすい、という説はウソである。私は赤道をまたいだことがあるが、赤い線なんかなかった。)
きっと飛行機の上では、新しい発想がうまれるでしょう。私は外国に度々出るが、その度に日本の宣教や牧会を見直すことができたことは、他の牧師のなかなかできない特権であった。
クリスマスに登場する「東からの博士たち」は星を見ながらの、ラクダの上からの思考は豊かであった。
前述の「三上」の共通点は、人間の孤独になる時間といえる。博士たちも、夜野宿をしていた羊飼たちも、これがあてはまる。
クリスマスの大忙しにごまかされず、ひとり静かに瞑想したいものである。「汝ら、静まりて、我の神たるを知れ」(詩篇四十六の十)。
一九九三年十二月五日
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