石の枕 石の枕 石の枕

チック・コリアというジャズピアニストのレコードアルバムNow he signs,now he sobs の裏面に掲げられている詩の一節である。

The wind blows over the lake
and stirs the surface of the water.
Thus visible effects of the invisible
manifest themselves.

風が湖上に流れ吹き
水面をかき乱す。
このように目に見えるものは
目に見えないものがもたらすのである。

少し注意してこの一節を味わうならば、意外なことに宗教哲学的な、あるいは形而上学的な内容さえもっていることに気づく。

すなわち、四つの言葉がここでは浮かびあがっている。「風」「波しぶき」「見えるもの」「見えないもの」。風が吹いて湖水に波しぶきが上がっている。これだけの実に自然な情景である。

さて、少し英語に慣れている人なら、すぐ気づくであろうが、明らかに「風」、すなわち「目に見えないもの」、一方「波しぶき」すなわち「目に見えるもの」という二つに対比でこの英詩は書かれている。そして何気なくわれわれの目にとまって現に見えているもの、ここでは「波しぶき」も、実はその背後に原因となっている、目に見えない「風」の存在がある、と指摘しているのであろう。 

聖書にも風の表現はいくつもある。今日本中を吹きめぐっている聖言もそれである。

「主が声を出すと、水のざわめきが天に起こる。主は地の果てから雲を上らせ、雨のためにいなずまを造り、その倉から風を出される」(エレミヤ十の十三)。「息(風)よ。四方から吹いて来て、この殺された者たちの上に吹き、彼らを生かせ」。

一九九二年十一月十五日

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