石の枕
のらくろ 「のらくろ」というマンガを読んで育った世代がある。著者の田河水泡氏の奥様は作家の高見沢潤子さんである。その田河夫人の書かれた「生かされて生きる尊さ」という文を読んだ。
のらくろという犬はとてもおっちょこちょいで、あわてんぼうで失敗ばかりしている。失敗ばかりして、自分で損をしたり、叱られたりしょげてしまうのですけれど、いくらしょげてもすぐに忘れて、また何かをやろうという、いつでも前向きの姿勢です。
私から申し上げるのはおかしいのですが、それが田河の性格なのです。のらくろは本当に田河と同じ性格です。自分がどんな損をしても、どんなに失敗しても、いつまでもいつまでもそれを考えていないのです。すぐにそれを忘れてしまって、もっと良い方向にいこうとする。失敗して、今悲しいけれどもこんなものよりも何かもっと良い出口があるだろうと、すぐに考えてやる人なのです。
ですから私は結婚してもう五十年以上も経つのですが、田河は一度も不平不満の顔をしたことがありません。本当に「あー、嫌だ」とか「自分はこんな損をしてもう起きあがれない」などの不平の顔は見たことがありません。私たちも随分とひどい目にあいました。人にもだまされました。
結局、人間は損をしなければいけないと言うのです。私たちは損をするまいと、なるべく損をしないようにと考えますけれど、損をしたほうがいいというわけです。(お二人はクリスチャン)
歴史上で最大の損をされた方は、天の父なる神様である。勿論、主イエス様も同じこと。ご自身の最も大切なもの、かけがえのない存在を損して全人類の命を救うという大得を成就された。
であるから、損をしたことのない人は、キリストの恵みが分からない。神はあえて損をするように導かれることがある。損をして得をする人生。損したら、ハレルヤ、感謝します、と叫ぼう。
一九九二年八月二日
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