石の枕 石の枕 石の枕

心のリボン

笠原さんが初めて校長になったのは、新潟県の農村の小学校でだった。就任後まもなく運動会があった。あいさつの原稿を書いて覚えた。

閉会の時に登壇して子どもたちを見回したら、胸のリボンが目についた。一等は青、二等は黄色、三等は赤。一人が三回競技に参加したので、リボンを三つつけている子がいる。二つの子、一つの子、おや、リボンのない子もいる。

あいさつはやめた。「リボンを三つつけている人、手を上げなさい。はい、手をおろして。この人たちは大変がんばった人です。その場所にしゃがみなさい」。

次に「リボンを二つつけている人、手を上げなさい。はい、手をおろして、次にがんばった人たちですね。しゃがみなさい」。ここで親たちは心配した、と笠原さんは後で聞く。最後にリボンのない子が残るはずだからだ。

リボン一つの子たちも「がんばりました」としゃがませた。立っているのはリボンのない子ばかりである。「今残った人は、一生懸命やったけど、もうちょっとのところでリボンがもらえなかった人たちですね。がんばったことをほめて、校長先生が心のリボンをあげます」。

「さあ、投げますから、空中で受け取って胸につけてください」と言い、リボンを投げるまねをした。立っている子たちはそれを受けとめ、胸につける動作をした。拍手が起きた。

次の年、運動会の直前に訪ねてきた父親がいる。「うちの子は走るのが遅く、去年の心のリボンは初めて頂いたリボンです。やめないでください」。子どもが喜んでいる、という電話もかかり、その年も、次の年も続けた。

クリスチャンも人生を全力で走ったら「心のリボン」を主から受ける。うれしいですね。イエスさまの気くばり、心くばり。最近祈っていた人が次々と召されて淋しいが、主から「心のリボン」を受けられていると信じて、主を崇めています。

一九九四年二月十三日

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